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かつてのボクに言っておきたいことがある。

「選挙に行っても政治は変わらない」

 

 

その理由は前にも触れた「民主主義の限界」もそうだけど、

もう一つ「日本の政治構造」が大きく関係ある。

 

 

君の時代でもそうだったけど今のボクの時代も

「この国を、政治を変えたければ選挙にいけ」と声高に叫ばれている。

だけど日本の政治構造を知ってもそう言えるのかな?

 

 

国を動かしているのは政治家ではない

 

日本では「三権分立」が成り立っているとされているね。

立法、行政、司法…むかし学校で習ったとおりだ。

 

国を動かす政策や法律を決めるのが立法の役割であり、

それを行っているのが国会であり政治家(議員)であるとされている。

だけど実際に政策や法律を決めているのは政治家ではなく官僚と呼ばれる人たちだ。

 

 

実は法律を決めるための行為「立法」の手続きには大きく2つ、

議員立法」と「内閣立法」がある。

 

1つ目は読んで字の如く「議員が法案を作って国会に提出する」議員立法。

2つ目の内閣立法は「官僚機構が法案をつくり内閣で調整し国会に提出」したもの。

 

そして日本の政策・法律の8割近くが内閣立法によって出来上がっている

いわばこれまでの日本の政策や法律の大半は官僚がつくっているんだ。

じゃあ政治家は何をするかといえば最後に体裁を整えるだけ。

 

 

なぜそうなってしまうのか?

法案作成の知識やノウハウを持つ政治家がほとんどいないから。

 

実は法案の作成はとても難しくて、

句読点(「、」「。」)の打ち方や「てにをは」の使い方まで厳格に決められている。

加えて「読み方次第でいくらでも解釈を変えられる」ような文章表現の技巧を施さなければならない。

これがいわゆる「霞が関文学」と揶揄される所以だね。

 

 

 

前にも触れた「村山内閣が消費税を廃止できなかった」理由はこれが原因。

当時の社会党には官僚出身の議員がいなかったため、

国会へ提出する条件を満たした法案が作れず廃案となってしまったんだ。

 

 

「誰に投票しても同じ」は真理

 

「よくわからないから行かない」

「選挙に行っても何も変わらないから」

 

選挙の時期にテレビをつけると

このような「選挙に行かない若者」の意見が取り上げられる。

 

番組内は毎度同じ。

選挙に無関心な若者を批判し投票率の低下を嘆く。

だけど「誰に投票しても同じ」は本当に批判されるべき発言かなな?

 

だって実際に法案を作っているのは官僚機構だし、

政治家の仕事はといえば最後に調整して国会に提出するだけだよ。

 

「誰に投票しても同じ」との考えを抱いても仕方ないんじゃないのかな?

「選挙に、政治に期待しない」のは当然の感性だと思うのだけど。

「投票に行けば何かが変わる」と期待させる方がよほど無責任な気がする。

 

 

「官僚主導」はこれからも変わらない

 

「官僚政治からの脱却」

「政治主導を取り戻す」

 

このような声を上げる政治家は一部いるけれども大半の政治家はそう考えていない。

 

例えば現政権の安倍首相もしきりに「政治主導」を唱えてはいるが、

その実「官僚主導」を是としているように見える。

 

象徴的な事例は安倍政権の桜田義孝議員だ。

彼は安倍首相の任命を受けて「サイバーセキュリティ担当大臣」についた。

 

インターネットが普及してから年々増えてきたネット犯罪やクラッキング、ウイルス…。

これらの被害に国を上げて対策を講じようと立ち上げられた部署。

 

当然、インターネットへの知識・造詣が深い人物がトップに立つべきだけど

桜田氏は「パソコンを触ったこともない」と発言してしまい大問題になった。

 

当然大きな批判が巻き起こり2019年4月に辞任はしたが、

ボクは「官僚政治を是としている政治家たち」を象徴する出来事に見えた。

 

 

航海の知識がない人間が船長だって?

 

「船長」を想像して欲しい。

船長となる人間には海の知識や航行の技術・経験が当然求められるワケだ。

 

だって航海の知識が皆無の人間が船長になってしまえば

もし海の上で想定外の事象が起こったとき采配を振るえる人がいなくなるからね。

 

だけど当時の安倍内閣は違った。

安倍首相はパソコンの知識もない人間を大臣に指名し、桜田氏もこれを引き受けた。

 

なぜか?

「実際に仕事をするのは現場だから、トップはお飾りでも構わない」から

 

これはあくまでもボクの想像だけど、

安倍内閣にもそういう意識があったからこそこのような人事がまかり通ったのではなかろうか?

 

もし安倍首相がお題目の通り「政治主導」を目指しているなら

その分野に何の知識もない人間を大臣に任命するのは狂気の沙汰と言う他ない。

安倍首相も桜田氏も「仕事は官僚がしてくれる」と考えていたとしか思えない。

 

 

選挙で日本の政治は変わらない

 

これは桜田氏の発言が発端となった特異な例だけど似たような事例は枚挙に暇がない。

そもそも自分が担当する分野の専門知識を持たない政治家が省庁の大臣に就くことはよくある。

内閣に必ずしも担当分野への造詣が深い人材がいるとは限らないからね。

だから各省庁は誰ががトップに立っても問題なく機能するようになっている。

それにもしトップに就く人間によって方針や業務が変わってくるならそっちの方が問題だ。

官僚機構は一つの「システム」として出来上がっている。

 

 

でもそれを良いことに自分が担当する分野を勉強しようともしない議員は多数いる。

実際は官僚がすべてを決めて書類を作って、

書類がどんな内容かも理解せずに判子を押している大臣もいるだろう。

 

その象徴的な事例が「IT(アイティー)革命」を「イット革命」と読んだ森首相だ。

なにも理解しておらず、官僚が作った原稿をただ読み上げるだけ。

そんな人間が首相の座に就いてしまうのが日本の政治構造だ。

 

そんな状況で「政治を変えたければ選挙に行け」?

政治構造はそのままなのに選挙で「お飾り」の政治家を選んだところで

それは砂地に水を撒くようなものだとボクは思えてならない。

 

 

選挙で老害政治は変わるか?

 

それにただでさえ政治の世界は新陳代謝が悪い。

「椅子を後進に明け渡す」潔い政治家なんて話はまず聞かない。

棺桶に片足を突っ込んだ老人たちがいつまでも居座り「ご意見番」などとデカイ面をしている。

 

「日本を変えたい」との気概を持つ若手政治家がいたとしても、

彼らが「今のままではダメだ」と独自に動き出したとしても。

政治の世界で幅を利かせる老人たちがそれを許すかな?

 

政治だけでなく「閉鎖的な業界」はとにかく新しいことを嫌う。

若手政治家が行動を起こそうとすれば老人たちは“忠告”することだろう。

かつて築いた基盤や人脈を使って“世話を焼く”だろう。

 

最初は熱い志を持っていた若手政治家たちも、

事が思うように進まずにやきもきし、牙を抜かれていく。

しまいには「長いものには巻かれろ」と老害の世界に沈んでいく。

 

それに官僚たちが「日本を動かす」という美味しい仕事をみすみす手放すだろうか?

彼らは一流大学を出て熾烈な競争を勝ち上がってきた新進気鋭の若者たちだ。

古ぼけた価値観に凝り固まった政治家を出し抜くことなどお手の物だろう。

 

 

「政治を変えたければ選挙に行け」と言うのは簡単だ。

だけど再三触れたように日本の政治を実際に動かしているのは官僚。

そして「官僚主導」を是とする老政治家たちが実権を握っている。

 

こんながんじがらめの状況でただ「選挙に行け」を連呼するのは無責任じゃないかな?

政治を変えるのは自販機でジュースを買うように簡単にはいかない。

票を投じただけで変わるほど政治の世界は簡単ではないとボクは思う。

 

 

だから何度でも言う。

「選挙で政治は変わらない」